辨 |
オリーブ属 Olea(木樨欖 mùxīlăn 屬)には、旧世界の熱帯~暖温帯に約32-33種がある。
オリーブ O. europaea(油橄欖・洋橄欖・木樨欖)
O. rosea(紅花木樨欖) 雲南・インドシナ産 『中国本草図録』Ⅷ/3736
O. tsoongii(O.yunnanensis;雲南木樨欖) 海南島・西南産 『雲南の植物Ⅱ』209
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モクセイ科 Oleaceae(木樨 mùxī 科)については、モクセイ科を見よ。 |
訓 |
漢名のうち、阿列布(アレツフ,ālièbù)は olive の音写。齊墩(セイトン,qídūn)は、アラブ語の zaytum の音写。 |
漢名を単に橄欖(カンラン,gănlăn)と呼ぶ植物は、カンラン科 Burseraceae(橄欖科)の木本カンラン Canarium album(橄欖;E.Chinese olive,Java almond tree)。従って、日本で俗にオリーブを単に橄欖と呼ぶのは、厳密にいえば誤り。 |
The New Testament, St. Matthew, Chapter 24/3 に、
And as he sat upon the mount of Olives, ...
とある部分を、明治初の『新約全書』は
イエス橄欖山(かんらんざん)に坐(ざ)し給(たま)へるとき・・・
と訳した。(手許で参照しているのは明治15(1882)年 北英国聖書会社 日本横濱印行『新約全書』)。 |
説 |
原産地と栽培の起源については諸説があり、かならずしも明らかではない、という。
古くからメソポタミア・シリアなどの地に野生し、B.C.3000-B.C.2000ころには栽培され始め、地中海沿岸地方に古くから伝わった。
今日では、広く北アメリカ(カリフォルニア)・南アメリカ・南オーストラリア・インドなどで栽培する。ただし、世界の三大生産国はスペイン・イタリア・ギリシア、しかも地中海沿岸で全生産量の97-98%を占める。 |
誌 |
果実を、淡黄緑色になったころに採って緑果塩蔵(グリーンオリーヴ)用にし、わずかに紅紫色を帯びたころに採って熟果塩蔵用(ライヴオリーヴ)にし、濃紫黒色に完熟したころに採ってオリーヴ油
olive oil を搾る。 |
ギリシア・ローマでは勝利・豊穣の象徴であり、ギリシアではアテナの木、ローマではユピテルやミネルヴァの木。今日ではギリシアの国花。 |
キリスト教世界では、『旧約聖書』「創世記」にノアの洪水の後ハトがオリーヴの枝をくわえて来たことから、平和の象徴。
今日の国連の旗には、オリーブが意匠されている。 |
日本には、蘭医林洞海が文久3(1863)年にフランスから苗を導入し、横須賀で栽培したのが始まり。
(一説に18c.中葉、長崎の崇福寺でオリーブが実ったという)。
明治41年(1908)以降、香川県小豆島で栽培されている。今日では香川県の県木・県花。 |
オリーヴのあぶらの如き悲しみを彼の使徒もつねに持ちてゐたりや
(1946,齋藤茂吉『白き山』)
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